臨機応変に対応できる方

中途採用の求人広告(正社員)を見ていると、求める人物像としてよくこんな言葉を目にする。

 

臨機応変に対応できる方。

 

これは、「自身より立場の強い者からの理不尽とそこから受けるストレスを、呑み込んで自家消化できる人」という意味だ。

経済学では「労働の原資は休養」と定義されているので、これに倣うと上記の人物像は、「理不尽とストレスを吸収できる強靭な肉体と精神、もしくは、すぐに忘れ去ることが可能な幸福な私生活のいずれかを保有する方」という意味になる。

ブラック企業には「善良な市民が築きあげた人財を言葉巧みに収奪し尽くす」という基本精神があり、「人財」を「金銭」に置き換えて成り立つオレオレなどの特殊詐欺と同じ血筋にある。

前述のような人物は、親の労働と愛情によって形成された善良な若者だったり、体育会系の軍隊教育と肉体訓練によって形成された筋肉脳ソルジャーだったりする。

これらの資産を養分として使い捨てるために用いられる言葉がこの人物像だ。

 

求人広告は下手な推理小説を読むより奥が深いリアルな人間捕獲劇である。